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気候変動による物理的リスクと企業が取るべき対応

気候変動へのレジリエンスを高めるために、物理的リスクのモデリングを活用してMarshがご提供できること

適切なリスク管理と、気候変動リスクに関する情報開示義務を果たすためには、気候変動による物理的リスクのモデリングが不可欠です。

世界の平均気温の上昇に影響され、台風、洪水、熱波などの極端な気象現象が頻発し、気候関連の災害は過去20年間に世界全体で83%上昇1しました。洪水、暴風雨、山火事などの深刻かつ極端な気象現象は、2011年以前には考えられなかった大規模な損失をもたらし、2017年から2021年の5年間のうち2019年を除く4年間のすべてで年間50億米ドル以上の保険損害が発生しています2

アジアでは、発生した自然災害による経済損失総額の90%が無保険であることが、災害からの事業の復旧を困難にしています3

企業の持続可能性が危ぶまれる中、物理的リスクを正確に分析することは、リスクの軽減策や転嫁策の最適化に繋がります。物理的リスクの定量化は、様々なリスクシナリオと時間軸(短期/長期)による、資産や資産ポートフォリオの潜在的損失を把握することによって可能となります。

気候変動による物理的リスクの定量化とは

物理的リスクの定量化とは、洪水や台風のような壊滅的な脅威から干ばつのような慢性的な被害まで、様々なリスクが企業の資産や事業に与える影響を特定するために、過去の損害額のデータと詳細な気候予測を組み合わせて分析する手法です。

分析の結果、特定のリスクに対する損害や事業中断の影響について、アセットレベルでの詳細な見解だけでなく、主要なリスクについてビジネスセグメントレベルのリスクの見通しが得られます。

物理的リスクの定量化で、よくある見落とし

物理的リスクのモデリングやアプローチは画一的ではなく、その目的によって選択する必要があります。さらに実用的な結果を得るためには、確実性の高いプロセスと対象地域に即した信頼性の高い科学的および工学的データによる裏付けが重要です。

つまり物理的リスクを定量化する前に以下の事項を検討することが肝要です。

  • 自然災害モデリングをする際、損害を引き起こす可能性がある災害を漏れなく選択すること。
  • ビジネスでの使用に堪える正確性と整合性を持った最新のモデルを選択すること。
  • 気候シナリオと時間軸の適切に選択すること。
  • 正確な位置データを入手すること。
  • 各国の規制当局による開示要請等、企業のニーズを満たす分析結果を入手できるか確かめること。

物理的リスクをマネジメントするための7つのステップ

上記のような見落としをしないために最も重要なことは、適切なリスクコンサルタントに依頼することです。大災害事象や気候変動リスクモデルを提供するモデリング会社と協力し、最新かつ、独自のアプローチから、適切な予測結果を導き出せる専門チームを探しましょう。

企業が将来に渡って事業を継続するために、以下の7つのステップで物理的リスクのデータを定量化し、対策することが推奨されます。

図1

 

企業は総合的にリスクを把握し管理することで、気候変動を含むリスクレジリエンスの強化に向けた実行計画の正当性を、投資家などのステークホルダーに開示できます。

さらに、物理的リスクの定量化は、金融機関にとって物理的な損害予測を信用リスクへ換算することを意味します。製造業者であれば、サプライチェーンやオペレーションリスクへの影響を評価することで、レジリエンス強化に対するシステム全体のアプローチとして活用できます。

リスクエンジニアリングによるモデリング結果の検証

マーシュのリスクエンジニアは、企業の資産と脆弱性をより深く理解するために拠点を実地で調査し、脆弱性の特定(例えば、洪水が発生しやすい場所における現状の対策の有効性評価)や、現状のリスク管理手法の評価、さらなるレジリエンス強化のための具体的な提案を行うことも可能です。

ケーススタディ:グローバル金融機関

あるグローバルに展開する金融機関では、住宅ローンに関するポートフォリオの評価、気候変動に対するオペレーショナルリスクの評価、TCFDのフレームワークに沿った開示を目的とした、包括的な気候変動リスク対応が必要でした。マーシュは世界の約100拠点に対して、複数のリスクモデルを使って評価を行いました。資産は低リスクから高リスクまでのリスクカテゴリーに分類され、マーシュは高リスクカテゴリーに分類された2件の資産に対し、現地でのリスク評価を行いました。

1 - Extreme Weather Events Have Increased Significantly in the Last 20 Years. Yale Environment 360 (2020). https://e360.yale.edu/digest/extreme-weather-events-have-increased-significantly-in-the-last-20-years  

2 - Natural catastrophes in 2021: the floodgates are open. Swiss Re Institute (2022). https://www.swissre.com/dam/jcr:326182d5-d433-46b1-af36-06f2aedd9d9a/swiss-re-institute-sigma-natcat-2022.pdf 

3 - Natural Catastrophe Protection Gap in Asia Calls for Collaborative Innovation. Guy Carpenter (2022). 
https://www.guycarp.com/content/dam/guycarp-rebrand/pdf/Insights/2022/2022.7-Protection-Gap-Publish-final.pdf