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アジアの自動車業界トレンド:保険会社が競争優位を維持しながら将来の先手を打つ方法

電気自動車(EV)の販売が増加する中、自動車業界で保険会社が的確な保険商品を手配するために注視する事項とは。
Car toy beside man using mobile phone

電気自動車(EV)の利用増と規制環境の変化を背景に、保険会社は前例のない変革期に直面しています。

電気自動車(EV)の販売は2023年に減速したものの、増加基調を継続しています。2024~2028年にかけてアジアの販売台数は年平均22%のペースで伸び、今後5年間で世界のEV販売予想台数1億1,500万台のうち、63%を占める見込みです。1 EVの導入増に呼応して、EV保険市場も2022年の641億8,000万米ドルから、2029年には6,876億2,000万米ドルへ成長する見通しです。2

さらに同業界は、国ごとに大きく異なる消費者保護法や環境規制、安全性基準をはじめ、複雑な規制環境に直面しており、米国のインフレ抑制法や欧州連合(EU)のネットゼロ産業法などの法的な規制を背景に、市場へのアクセスやサプライチェーンの面でも揺れ動いています。

2022年8月に可決した同法は、国内生産や電気自動車(EV)・部品の国内購入の促進を目的とした条項が盛り込まれており、アジアのEVメーカー、特に中国のメーカーに影響を与えています。重要な特徴の一つとして「懸念される外国の事業体」製のバッテリーを搭載したEVに制約が課されており、リチウムイオン電池の主要生産国である中国に打撃を与えています。同法では、国内のEVメーカー支援を目的に補助金(税額控除)が設けられています。全額控除の対象となるには、懸念される外国の事業体以外のバッテリーを使用してEVを組み立てることが要件とされており、中国を含むアジアのEVメーカーは苦境に立っています。顧客が全額控除を受けられなくなるため、競争面で不利な状況に置かれています。

加えて、同法は米国内における製造サプライチェーンの構築と極東におけるサプライチェーンへの依存度引き下げに重点を置いています。同法のねらいは、北米における国内生産への投資と雇用創出です。国内調達が重視されることで米国内でのEV生産に向けた投資やサプライチェーン網が拡大し、アジアのEVメーカーに悪影響が及ぶ可能性があります。

欧州連合(EU)は、EU域内での企業活動やグリーン投資を維持し、2050年までの温室効果ガス排出量のネットゼロを達成するために、ネットゼロ産業法を提言しました。同法が施行された場合、メーカーは低排出量車の開発・生産を加速させるでしょう。その結果、EV技術への投資増、充電インフラの拡大、排出量基準の厳格化につながる可能性があります。また、同法では、再生可能エネルギー源、バッテリー技術、およびEV業界に不可欠な他分野の研究開発にインセンティブが付与される可能性もあります。

保険会社が懸念すべき事項とは

業界の発展に伴って新たなリスクが生じ、既存のリスクも高まっています。自動車業界で保険会社が的確な保険商品を手配し、目まぐるしく変化するEV分野の技術や規制環境に適応するには、以下の主要なリスクに注視する必要があります。

1. 地政学的緊張に起因するサプライチェーンの混乱

自動車メーカーが世界貿易に依存する度合いが増加の一途をたどる中、サプライチェーンの混乱リスクも高まっています。政情不安や貿易戦争、貿易政策の突然の変更は、自動車に欠かせない部品・原材料の輸出入に深刻な影響を与える恐れがあります。たとえば、米国政府による中国製インターネット接続型自動車の禁止 に向けた動きや、世界の主要航路を混乱させる紅海での船舶攻撃は、コスト増、配送遅延、市場への供給制約を悪化させる典型例です。

2. 規制リスクと人材リスクに起因する世界進出への障害

米国インフレ抑制法やEUのネットゼロ産業法とは別に、自動車メーカーが国際貿易協定や関税に対処する際には、コスト構造と収益性の面でも新たな障害に直面する恐れがあります。さらに、事業拡大時には、人材の入手可能性、コスト、現地労働法の遵守など現地の労働市場が抱えるリスクも考慮する必要があります。こうしたリスクが顕在化すれば、現地労働者の利益保護や所定の給与・手当支給の義務化を余儀なくされ、事業の戦略面とコスト面に悪影響を及ぼすでしょう。

3. 新興の自動車技術に関連する製品リコールおよび賠償責任リスクの高まり

新たな自動車技術と部品の採用に伴って、製品のリコールが増加する可能性があります。また、製品の賠償責任も懸念事項です。たとえば、EV用リチウムイオン電池では、制御不能な熱の蓄積を防ぐために専用の安全対策が必要です。2022年には、EVバッテリーが原因で船舶火災が起き、自動車運搬船が沈没しました。3 保険会社は、賠償責任補償の引受時に、この種のバッテリー関連の事件を入念に考慮しています。

4. 相互接続技術に起因するサイバーセキュリティー脅威の台頭とその進行

相互接続型のシステムで業務運営と顧客エンゲージメントを行い、その両方をデジタルプラットフォームに依存しているがゆえに、EV充電スポットの運営会社を含めて、自動車会社がサイバー攻撃や情報漏洩、ランサムウェアの主な標的にされています。現在、遠隔地からのサイバー攻撃が物理的な脅威の件数を上回っているため4、保険会社は、「スマートカー」が自動車の機能および制御の乗っ取りに脆弱であり、安全性や賠償責任の面で深刻なリスクをもたらす点に留意する必要があります。その点を踏まえて、市場動向を注視しながら、顧客を取り巻くサイバーリスクの評価やサイバーセキュリティー保険の組成、将来起こり得る損失の正確な定量化を進めなければなりません。

保険会社はどのように対処すべきか競争優位性を得るための4つの方法

前述のように保険市場は複雑性が増していますが、その中で保険会社が優位性と収益性を保つには、自動車業界の動向をつぶさに見極めて、従来の補償モデルを再設計する俊敏性と専門性が必要になります。ここでは、保険会社がビジネスチャンスをつかむための方法を4つご紹介します。

1. 規制への適応 : 保険会社は、EV業界の規制環境の変化を見据えて、自社の保険契約を新たな基準と要件に適合させる必要があります。安全面や環境面などの規制遵守に関する補償もその一例です。また、アジアで事業を急拡大中の自動車メーカーが進出や事業展開を目指す市場においてコンプライアンスや透明性、説明責任の要件を満たせるように積極的に支援する方法もあります。

2. オーダーメイドの保険商品 : EV業界特有のリスクを付保する商品を手配できれば、その保険会社は競争優位に立てるでしょう。メーカーやサプライヤー、充電インフラ提供企業向けの補償もその一例です。損害率を最適化する強固なリスク移転ソリューションを設計するには、リスクアドバイザー、保険ブローカー、業界のステークホルダーとの緊密な連携が極めて重要になります。

3. 付加価値の高いサービス : 保険会社は、EVメーカーとそのステークホルダーが抱えるリスクの軽減に向けて、リスクマネジメントサービスを提供することが可能です。具体的には、リスク評価、安全性に関するガイダンス、サプライチェーンの分散に向けた助言(特にEVバッテリー向けの上流での原材料供給)、リスクマネジメント面の実務を強化するためのリソースなどが挙げられます。また、事故や損害を減らすための安全技術の採用を奨励する方法もあります。

4. データ分析とテレマティクス : 保険会社は、データ分析とテレマティクスを活用して、EVオーナー向けにリスク評価を行い、個々に合わせた保険商品を提供することも可能です。EVのテレマティクス装置は、運転行動、バッテリー性能、車両の使用状況に関するデータを収集します。保険会社は、こうしたデータを活用して利用状況に応じた保険の最適化や安全運転の促進、オーダーメイドの補償オプションの提供を行うことが可能です。収集したデータと分析から実用的な情報を得て、新商品の開発にも活かせます。

保険会社が今すぐ対策を講じるべき理由とは

自動車業界では技術革新が目まぐるしく起きていますが、保険会社には、継続的な規制環境の変化や引受キャパシティ面の課題を理由に、様子見の姿勢を取る傾向があるのではないでしょうか。しかしながら、従来の補償モデルからの移行にはさまざまなメリットがあります。適応力の高い保険会社は「先行者」としての競争優位性を勝ち取り、貴重なデータを入手して適切な商品・サービスを設計できるでしょう。そのほか、自動車業界がブランド力と収益力の向上に保険ソリューションが貢献する点に着目し始めているため、保険会社は多様な組込型保険ソリューションを設計する機会に恵まれています。

また、保険会社は、自動車業界の将来にふさわしい新たな保険モデルの構築に向けて、メーカーやテクノロジー企業、規制当局と積極的に連携するべきです。このような取り組みを通じて、保険会社は技術の進化や規制要件の変更と足並みを揃えることができます。

マーシュが保険会社を支援する仕組み

マーシュは、自動車業界に関わる深い専門性を有しているだけでなく、同業界の先進的なトレンドや技術、設計にも精通しています。企業と連携してリスクマネジメント面の実務を改善したり、引受に不可欠なデータを収集・モデル化したり、自動車業界の透明性を促進したりすることで、保険会社が引受キャパシティを増大させて、持続可能かつ競争力の高い保険プログラムを提供できるように鋭意支援しています。

マーシュは保険会社に実用的な情報を共有することで、それぞれのリスクにきめ細かく効果的に対処しています。また、保険会社と自動車メーカーとの連携を円滑化することで、最新の画期的な自動車技術にきめ細かく対応した保険ソリューションを提供しています。さらにマーシュは、自動車関連のリアルタイムデータを活用して個々に合わせた保険(利用ベース保険(UBI)など)を提供し、正確なリスク評価と安全運転の習慣を促すことで、データ主導型の保険モデルをけん引しています。

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