1.2023年を振り返って
2023年1-12月の日本企業のM&A件数は4015件と、過去最多を記録した2022年の4304件を289件、6.7%下回り、2020年以来3年ぶりに減少したとのことである。4015件のマーケット別内訳は、IN-IN3071件、IN-OUT661件、OUT-IN283件で、IN-INとOUT-INで減少しているようだ(以上、マールオンラインより抜粋)。
一方、表明保証保険の手配などを通じて、M&A市場と密接な関りを持っているマーシュの日本法人においては、表明保証保険の取り扱い件数・保険料とも、過去の最高記録を更新した。これは、国内での低金利や為替レートの影響により円貨での資金調達コストが低水準で推移したことに加え、外圧による日本企業の不採算部門の売却の加速により、表明保証保険の主要な利用者であるPEファンドの国内での活動が活性化してことが、主な要因として考えている。
反面、日本以外でのマーシュのPEMAチームにとっては、2023年は決して平坦な道のりではなかった。この原因として、日本における状況とは逆に、PEファンドが金利上昇で資金調達コストが増えたことや、地政学的緊張が高まったことにより、M&Aの件数が大きく減少したことが考えられる。
以上のような状況の中で、本稿では表明保証保険の国内外のマーケット状況や、Tax Liabilityなど表明保証保険以外のM&A関連保険商品のマーケット動向について、解説したい。
2.アジアにおける表明保証保険のマーケット状況
日本企業がクロスボーダー案件で表明保証保険を活用する場合は、ターゲット会社が北米に所在していない限りは、アジアに拠点を置く保険会社を窓口として見積もりを取得することが多い。そのような中、マーシュのアジア全体としては、取り扱った保険証券の数は過去最高を更新しているが、取り扱った保険料の合計は2021年・2021年を下回っている状況にある。