(*)以下、表明保証違反等を「事故」、表明保証保険に基づいて保険金請求の通知を行うことを「事故報告」といいます。
アジアでは、M&A(合併・買収)のリスクを軽減する手段としてトランザクショナル・リスク保険(表明保証保険を含む)の導入が増加しており、それに伴い事故報告も増加
2022年、アジアでは新たな保険会社の参入が相次ぎ、アジアにおけるM&A・不動産取引に関連するリスクへの保険会社の引き受け意欲が高まっています。マーシュはアジアでの保険市場の拡大を歓迎すると同時に、実際の案件で特定の保険会社をクライアント様に推奨させて頂く上では、迅速・円滑な事故処理能力を重要視しています。
2022年、アジアで手配された保険契約については、引き続き堅調な契約件数と事故報告件数に相関関係が見られました。また、現地損保会社による国内案件に対する保険金支払いを含め、アジア全域において記録的な保険金支払い事案が発生しました。
1.世界的な概況
- 2022年の事故報告件数は2021年比で25%増加
- 保険開始から事故報告がなされるまでの期間が長期化
- 財務諸表の表明保証違反に基づく事故報告の割合は大幅に減少し、税務、法令遵守、訴訟に関する事故報告の割合が増加
- マーシュが表明保証保険を手配した顧客が 2022 年に受領した保険金の総額は 2 億 3,200 万米ドルを超え、2021年比で大幅に増加
- 2022 年に支払われた保険金は、過年度に事故報告された財務諸表違反によるものが多数
2.APAC(アジア太平洋地域)の概況
① 事故報告件数: 2022年にAPACで提出された事故報告件数は24件で、2021年とほぼ同数だった。ただし、世界の事故報告件数が2019年比で7%増であったのに対し、APACでの事故報告件数は2019年比で30%増加しており、当該地域の市場の成長を反映した結果であると分析できる。
②事故対応: 2022年にクローズした案件の9%で、2022年中に事故報告がなされた。全体として、事故発生率は過去2年間で減少しており、これは全世界で報告されているトレンドと一致している。
③事故の種類: ここ数年では税務と財務諸表に関するものが多かったが、2022年は訴訟に関する事故が最も事故の多いカテゴリーとなり、事故報告の全体の64%を占めた。次に多かったのが税務関連の事故であり、全事故報告の 23%を占めた。これは、同年の全世界における事故報告件数の 25%が税務関連のものであったという統計と一致している。
④ 事故報告のタイミング: APACにおいては、事故報告のタイミングが保険開始から2年目以降となるものが大半を占めた。これは、保険開始後1年~1年半以内に大半の事故報告があったという過去の調査結果とは異なるが、これは保険期間満了間際の駆け込みの(ダメ元での)事故通知が多かったことが主な要因と考えられる。