中堅・中小企業は財物損害と事業中断における損害額の増加にどのように対処すべきか
アジア太平洋地域では、中堅・中小企業が全企業の97%を占めており、経済成長の主要なけん引役となっています。一方で、中堅・中小企業は、異常気象や気候変動、地政学的な紛争、サプライチェーンなどの事業中断リスクにきわめて脆弱です。
火災保険や企業財産包括保険に代表される財物損害保険ですが、一般的に財物損害(PD: Property Damage)に比べ、事業中断(BI: Business Interruption)の損害額が多くなる傾向があります。一方で財物損害保険(PD)の加入率は高いものの、事業中断(BI)が十分に補償されていない例が多く存在します。そのため、自然災害や地政学上の事象が起きた場合、財物と事業中断の両方を適切にカバーするPDBIが必要となります。
また、海外で提携工場があり、部品や資材を調達している場合、グローバルプログラムが組成されていれば、海外で起きた損害を起因とした、日本における事業中断の補償も可能となります。
たとえば、2023年に中国、ベトナム、フィリピンを襲った「台風トクスリ」の合計損害額は250億米ドルでしたが、その中で付保されていたのはわずか20億米ドルに留まります。[1]
東南アジア地域の自然災害は年々増加[2]していますが、7,100万社を超える中小企業のうち、わずか15%しか保険に加入しておらず、重大なリスク事象から回復できる企業はほんの一握りです。たとえば、インドネシアの補償ギャップは際立っており、6,400万社ある中小企業のうち、わずか3%しか自然災害の保険に加入していません[3]。十分な補償を得るための費用は比較的手頃な水準にあり、その費用対効果は大きいにもかかわらず、加入率は低位に留まっています。
サプライチェーンが複雑に絡み合う昨今では、たとえ自然災害の発生率が低い地域であっても、異常気象や地政学的リスクが顕在化すれば深刻な事業中断を招きかねません。シンガポールでは、中堅・中小企業の77%が事業中断に懸念を示していますが、事業中断保険に加入しているのはわずか22%です。[4] そのため、大多数の企業は、最近のサプライチェーンの分断や主要な大洋航路での輸送遅延(例:地政学的な紛争が勃発中の紅海、干ばつに見舞われたパナマ運河)など、望ましくない事象の損害を自ら負担せざるを得ない状況にあります。
データによるとPDBIの保険金請求件数は増加傾向となり、
自社のリスクと最適な補償範囲において、十分な理解が必要とされています。