東京, 2022年12月06日
世界経済フォーラムの最新のデータによると、今後2年間、ビジネスをG20諸国で行う上で最大の脅威となるのは、急激なインフレの影響、債務危機、生活費の危機です。
2022年4月から8月にかけて122か国の12,000人以上のビジネスリーダーの意見を引き出した今年の「エグゼクティブ・オピニオン調査(EOS)」の結果は、エジプトでのCOP27と今月末のインドネシアでのG20サミットを前に発表されたものです。
調査結果によると、G20ビジネスリーダーの間では、経済的、地政学的、社会的なリスクは市場の大幅な混乱や政治的対立の激化などの差し迫った懸念に対処するために、相互に連関するこれらのリスクに対する展望が主要なものとなっています。
急速かつ持続的なインフレは、今年調査したG20諸国 [1] の3分の1以上(37%)が最も懸念するリスクであり、債務危機と生活費の危機(21%)がそれに続きました。地経学上の対立は、G20のうち二ヵ国で最大のリスクとして認識されています。一方で、その他の国では、国家崩壊の可能性、デジタルサービスの普及不足とデジタル格差が最大の懸念事項として挙げられています。
今年の調査結果は、特にテクノロジーリスクや環境リスクなどの主要分野において、2021年の調査結果とは対照的なものとなっています。昨年1年間に環境圧力が高まり、環境規制が強化されたにもかかわらず、また、経済、地政学、環境の動向変化に対応したリスクを見直したことを考慮しても、今年の分析レポートでは、G20諸国における上位5つのリスクに占める環境リスクの位置づけは、2021年と比較して大幅に下がりました。さらに、重要インフラへのサイバー攻撃の脅威が高まっているにもかかわらず、サイバー攻撃やその他のテクノロジーリスクは、上位5つのリスクに挙げられていない地域も多く、これは大きな懸念事項です。
より広範にみると、今年の調査結果は、先進国と新興国との間の顕著な地域差も浮き彫りにしています。ヨーロッパ、ラテンアメリカ・カリブ海諸国、東アジア・太平洋地域では、急速かつ持続的なインフレに伴う経済的リスクが最大のリスクとして認識されているのに対し、中東・アフリカ地域とサハラ以南のアフリカ地域では生活費の危機に伴う社会的懸念が高くなりました。中央アジアと南アジアでは、それぞれ国家間紛争と債務危機が懸念事項の上位を占めました。
マーシュのコンチネンタル・ヨーロッパ統括リスクマネジメントリーダーであるキャロライナ・クリントは、次のように述べていま す。「G20 のビジネスリーダーは、現在直面している緊急の経済的、地政学的リスクに当然注目していますが、もし彼らが主要なテクノロジーリスクを見過ごしているならば、それらは将来的な盲点となり、深刻なサイバー脅威にさらされ長期的な成長プロセスに深刻な影響を与える可能性があります」。
チューリッヒ・インシュアランス・グループのグループ・チーフ・リスク・オフィサーであるピーター・ギガーは、次のように述べています。「世界のCO2排出量の上昇は2021年に20億トンに跳ね上がりましたが、今年はかなり低く3億トン近い数値です。これは、再生可能エネルギーや電気自動車の利用が伸びているからと思われます。こうした前向きな動きにもかかわらず、1.5℃の目標達成にはまだ道半ばです。ネットゼロへの移行は、多くのビジネスリーダーの短期的な課題からは大きく外れますが、気候変動の影響は短期的なものであると同時に長期的なものでもあります。現在の地政学的、経済的に厳しい環境下でも、ネットゼロの未来を手に入れるためには、よりクリーンで安価、かつ安全なエネルギーシステムの構築に注力する必要があります」。
エグゼクティブ・オピニオン調査は、新しい経済と社会のための世界経済フォーラムによって実施されています。マーシュ・マクレナンとチューリッヒ・インシュアランス・グループは、同フォーラムおよびグローバルリスク報告書の戦略パートナーです。
[1] フランス、ドイツ、イタリア、スペインを含む。その他EU諸国、ロシアを除く。